
社員寮をリフォームする際、「居室を直すべきか」「建物全体を改修すべきか」といった大きな検討に目が向きがちですが、実際には日常的に使われる共用空間の改善だけでも、寮全体の印象や満足度は大きく変わるケースがあります。
本記事では、社員寮ドーミーが実際に手がけた食堂リニューアル事例をもとに、どのような課題があり、どのような工夫によって「使われる空間」へと改善されたのかを具体的に紹介します。
全面的なリノベーションではなく、機能性と使いやすさを重視したリフォームによって、運営側・入居者双方にとって価値のある空間へと生まれ変わったプロセスは、今後の社員寮見直しを検討するうえでのヒントになるはずです。
目次
事例を読み解くうえで押さえておきたい視点
社員寮のリフォームは、物件の築年数や規模、利用状況によって最適な改善ポイントが異なります。
今回紹介する事例は、居室や建物全体ではなく、食堂を中心に改修を行ったケースです。
社員寮リフォーム全般の考え方や進め方については別記事で解説していますが、本記事では「実際に何をどう改善したのか」「なぜその改善が有効だったのか」に焦点を当てて見ていきます。
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事例|食堂リニューアルによって“使われる共用空間”に変わった社員寮
今回紹介するのは、ドーミーが運営する社員寮「ドーミー武蔵浦和」で実施した食堂リニューアルの事例です。
改修前に抱えていた課題
この寮では、食堂が設けられていたものの、以下のような課題を抱えていました。
- 配膳時の見通しが悪く、調理員の目が行き届きにくい
- 食堂内にある小上がりスペースが十分に活用されていない
- 掲示物が多く、掲示・管理が煩雑
- 給湯設備や手洗い場が使いづらく、衛生面・利便性に課題がある
いずれも致命的な問題ではありませんが、日常的に使われる場所だからこそ、積み重なると使いにくさとして感じられる要素でした。
課題① 配膳・動線の悪さを解消するためのオープンキッチン化
まず改善されたのが、配膳と調理スペースの関係です。
従来は、配膳時の見通しが悪く、調理員が入居者の様子を把握しづらい配置となっていました。
そこで、キッチンをオープン化し、正面に配膳台を配置するレイアウトへ変更。
これにより、
- 配膳時に調理員の目が届きやすくなる
- 入居者とのコミュニケーションが取りやすくなる
- 動線が整理され、混雑しにくくなる
といった効果が生まれました。
見た目のデザイン性だけでなく、運営のしやすさと安全性を同時に高める改善となっています。

課題② 活用されていなかった空間を「滞在できる場所」へ
食堂内にあった小上がりスペースは、これまで十分に活用されていませんでした。
そこで、パーテーションとテレビ設置用の壁を用いて空間を区切り、奥側をカウンタースペースとして再設計。
カウンターにはコンセントを設置し、以下のような使い方が可能になりました。
- 食事以外の時間帯にパソコン作業ができる
- 短時間の休憩や情報収集の場として活用できる
さらに、このテレビ壁の背面には災害用備蓄を収納できる棚を設置。
これまで置き場が分散していた備蓄品を集約し、日常空間の中で自然に防災対策を組み込む設計としています。
食堂改修でありながら、結果的に防災面の改善にもつながった点は、この事例の特徴といえるでしょう。

課題③ 細かな設備の“使いにくさ”を見直す
一見すると小さな改善ですが、日々の使い勝手に大きく影響するのが掲示板や設備周りです。
この寮では、朝・夕のメニューや注意事項など掲示物が多く、頻繁な貼り替えが必要でした。
そこで、大型の掲示板に交換し、マグネットと画鋲の両方が使える仕様を採用。
- 頻繁に更新するメニューはマグネット
- 長期間掲示する案内は画鋲
と使い分けができ、管理の手間が軽減されています。また、記帳台は立ったままでも記入しやすい高さに変更。
給湯室には電気温水器を設置し、これまで温水が出なかった環境を改善しました。
手洗い場についても、利用者が成人男性である点を踏まえ、通常より高めのカウンター式2ボウル手洗いを採用。水栓は自動水栓とし、衛生面にも配慮しています。
こうした改善は派手さこそありませんが、毎日の快適さを確実に底上げする要素です。

食堂リニューアルから見える、リフォーム成功のポイント
今回の事例から見えてくるのは、社員寮リフォームにおいて必ずしも大規模な工事が必要とは限らない、という点です。
- 日常的に使われる場所に絞って改善する
- 運営側の動線や管理のしやすさも考慮する
- 防災や衛生といった要素を“後付け”ではなく自然に組み込む
こうした視点を持つことで、限られた範囲のリフォームでも満足度の高い改善が可能になります。
居室や建物全体の改修は、次のフェーズとして検討されるケースも少なくありません。
まずは共用部から手を入れ、寮の印象や使われ方を変える―今回の食堂リニューアルは、その好事例といえるでしょう。
共用部の改善は、社員寮見直しの有効な第一歩
社員寮のリフォームは、老朽化対策としてだけでなく、採用・定着・運営効率の改善にもつながる取り組みです。
今回紹介したように、食堂という共用空間を見直すだけでも、
「使われていなかった場所が活用される」「日々の不便が解消される」といった変化が生まれます。
自社の社員寮を見直す際には、まず日常的に使われている場所にどんな課題があるかを整理することから始めてみてはいかがでしょうか。 本事例が、その検討の一助となれば幸いです。

