
老朽化や空室の増加、運営コストの上昇などを理由に、社員寮の廃止や売却を検討する企業は少なくありません。
しかし、土地や建物を手放さずに“再活用”することで、社員の住環境を守りながら資産価値を高めることも可能です。
本記事では、社員寮を再び価値ある形で活かすための考え方と、再活用の具体的な方法を解説します。
目次
社員寮を「再活用」するとは?廃止・売却との違い
この記事で扱う「社員寮の再活用」は、既存の建物や土地を維持しながら、時代や社員のニーズに合わせて使い方や運営方法を見直すことを意味します。
廃止や売却が“社員寮という機能を手放す”選択であるのに対し、再活用は“社員寮という機能を維持し続ける”選択です。
背景には、若手社員や単身赴任者、外国人社員など、社員のライフスタイルの多様化があります。採用競争力や離職防止の観点からも、「社員寮をどう残すか」「どんな形で運用し続けるか」が企業経営のテーマになりつつあります。また、不動産市況の上昇により、むやみに売却するよりも、長期的な運用によって資産価値を保つ方が有利なケースも増えています。
こうした流れの中で、社員寮を“再び価値ある資産として活かす”ための再活用が注目されているのです。
👉内部リンク:社員寮を「廃止」する前に考えるべきこと
社員寮を再活用する4つの方法
老朽化や空室などの課題を抱える社員寮も、発想を変えれば新たな価値を生み出せます。ここでは、社員寮の“機能を維持したまま再活用”するための4つの方向性を紹介します。
① リフォーム・リノベーションによる再活用
まず検討したいのが、老朽化部分を中心とした改修です。
水回り設備や照明、空調、セキュリティなどのインフラを整えるだけでも、居住性は大きく向上します。また、共用スペースを明るく開放的にしたり、Wi-Fiや宅配ボックスなどのニーズに応える設備を整えることで、若手社員の満足度を高めることもできます。
大規模な建て替えと比べるとコストを抑えられるため、費用対効果の高い再活用手段といえます。 「建て替えるほどではないが古さが目立つ」という物件ほど、部分的リノベーションの価値が大きいでしょう。
② 研修・短期赴任・在宅併用などへの柔軟な活用
社員寮を「長期滞在者のための施設」としてだけでなく、より多様な利用シーンに対応させることも再活用のポイントです。
たとえば、新入社員研修や短期研修の宿泊施設としての利用、地方拠点勤務者の短期赴任用住居、テレワーク社員が都市部で出社する際の滞在拠点など。
社員寮を固定的な“居住の場”から、人材の流動や働き方の変化を支えるインフラとして活かすことで、企業内のさまざまな人材が安心して働ける環境を整えられます。利用機会を広げることは、稼働率の向上にもつながります。
また、従来の入居ルールや期間を柔軟に見直すことで、社員寮がより多くの社員にとって身近な福利厚生施設として機能し続けることに期待できます。
③ 外部運営サービスの活用
社員寮を柔軟に活用していくうえでは、運営体制そのものの見直しも欠かせません。
建物を自社で保有したまま、日々の管理・運営を専門事業者に委託することで、社員にとって快適な環境を維持しながら、企業の負担を大幅に減らすことができます。
たとえばドーミーでは、企業をオーナーとした賃貸借契約の形をとり、施設の運営・管理・食事提供などを一括して担う仕組みを整えています。こういったモデルなら、老朽化した寮をリニューアルして再稼働させたり、短期赴任や研修など多様な利用にも柔軟に対応することが可能です。
自社で抱えていた運営リスクや管理コストを抑えながら、社員寮の機能を“より現代的な形で”持続させる。外部運営の活用は、まさに再活用を実現する現実的な方法といえるでしょう。
④ 一般賃貸としての開放や他社社員との併用運用
稼働率の低下が続く場合、空室を一時的に他社社員へ貸し出すのも選択肢のひとつです。社員寮としての枠組みを保ちつつ、限られた範囲で外部に開放する方法ですが、実施には注意が必要です。
社員寮は多くの場合「寄宿舎」として登録されており、外部利用を進める際は、建築基準法上の用途変更が必要となる可能性があります。例えば、消防設備の追加や避難経路の見直しなど大規模な対応が求められることもあります。
手続きやコスト負担が発生する可能性があるため、慎重に検討し、必要に応じて専門家へ確認しながら進めることが重要です。

再活用を成功させるためのポイント
社員寮を再活用するうえでは、「どのように使うか」だけでなく、「なぜ使い続けるのか」という目的意識を明確にすることが大切です。
コスト削減を重視するのか、福利厚生の充実を重視するのかによって、選ぶべき手法や委託範囲は変わります。
また、建物の現状や入居者の属性、立地条件などを丁寧に調査し、「改修費用」「運営コスト」「入居率向上によるリターン」を比較・検討することも欠かせません。
特に外部サービスを活用する場合は、運営の透明性やサポート体制も見極めておくと安心です。

社員寮を“残す”という選択が、新たな価値を生む
社員寮を「老朽化したから」「使われなくなったから」といってすぐに廃止・売却するのは簡単です。
しかし、再活用という選択肢をとれば、既存の資産を活かしながら、社員の生活を支え、採用や定着といった人事戦略にも貢献できます。
社員寮を“コスト”として終わらせるのではなく、“企業の基盤を支える資産”として再生させる。それがこれからの時代に求められる、社員寮の新しいあり方といえるでしょう。
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